歳時記

 人は、そのよわいは草のごとく、その栄えは野の花にひとしい。風がその上を過ぎると、うせて跡なく、その場所にきいても、もはやそれを知らない。 詩篇1031516

葛の花

家人が一輪の葛の花を摘んできました。手に取りその臭いを嗅ぐと驚くほど素晴らしい香りでした。そう、春に咲いていた桜の「駿河台匂い」の香りに近いかもしれません。駿河台匂いは仄かな香りでしたが葛の花はもっと自己主張の強い香りです。残念なことに花の命は儚くすぐに萎んでしまいました。先日思い切って葛の葉の採取に膝の痛みと相談しながら小散歩に出かけました、幸い膝はおとなしくしてくれていたので採取は成功でした。採取した葛の花をコップに挿してそのふくよかな香りを楽しでおります。花房を丹念に見ると先端の明るい銀鼠色の蕾が下に向かって次第に紫色を帯びた深みのある色になり最後に開花して紅紫色の花弁になります。この見事な色のグラデーションが葛の花の深みを帯びた紅紫色にしているのは蕾時代の銀鼠色のせいかもしれないと独り合点しています。余談ながら葛からは葛粉、葛布など古来から日本人の生活に欠かせない大事な植物でした。

<葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり  釈迢空 >

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