講演会(11月17日礼拝後)

「もしものときを迎える前に ― エンディングノートを手掛かりとして」

講演者 堀越洋一氏

本日は、堀ノ内病院(埼玉県新座市)の地域医療センターで在宅診療に携わる堀越洋一医師をお迎えして上記の題目で講演会を行いました。 エンディングノートと聞くと、大方は、ただ人生の最終段階に向けた準備と受け取るのではないでしょうか?実は、それを記入することは、自分らしく今をより良く生きるためのヒントを見いだす前向きな活動であるということを堀越医師はわかりやすく丁寧にお話し下さいました。

今回の講演では、新座市が市民向けに発行・提供しているエンディングノートを具体例にして解説して下さいました。

エンディングノートの内容はいろいろな分野に分かれています。(1)自分自身について記入する章、(2)人生の最終段階における医療やケア・介護についての考え方や希望を記入する章、(3)亡くなった後の葬儀や財産その他の事務的なことについての考え方や希望を記入する章、(4)大切な人へのメッセージを記入する章。今回の講演では、(1)と(2)を中心にお話しして下さいました。

1は、自分史を記入するところから始まって、自分の夢、今の健康状態、自分と関りのある人たちについて記入するところです。

2は、以下の項目について選択肢の中から答えを選びます。介護が必要になった時に希望する介護者、介護してほしい場所、介護費用、人生の最期を迎えたい場所、重大な病気になった場合の告知の有無、判断能力が低下した場合の対応方、生き続けることは大変かもしれないと自分が思う状況。それと、生きられる時間が限られている場合に何を大切なことと考えるか、自分で決められなくなったら治療ケアを誰に代わりに決めてほしいかのリストを記入するところもあります。

これらの記入項目について、堀越医師は自分だったらこう記入します、と例を示しながら解説して下さったので、聞く方にとっても記入することが身近に感じられるようになったのではと思いました。

これらの記入は、エンディングノートの最初の「活用のポイント」にもあるように、何度でも書き直しが出来るように鉛筆書きが推奨されます。熟慮を重ねて、自分にとって最良のもの納得のいくものが書ければいいのです。

それと、2に関連して、肉親等、身近な人や、医療・介護従事者も交えて、項目について話し合う「人生会議」を持つことの重要性も話されました。人生の最終段階の重要な事柄について、自分の考え方や希望をそうした人たちと共有することですが、実際には、十分余裕をもって人生会議が行われることはほとんどなく、大抵は、大きな病気をしたり介護が必要になった段階で初めて行われるとのこと。その時に、医師や介護側から会議を開くように推奨するのだそうです。もしその時までにエンディングノートに記入がされていれば、会議の話し合いがスムーズに行くことになり、その意味で人生会議の準備の役割を果たします。難しい項目についていきなり話し合うよりも、本人が前もって文章化できていれば、そういうことが可能になるのです。

実は、エンディングノートは今はどの自治体にも準備がされており、問い合わせれば誰でも入手できるものだそうです(新座市のものは300円)。

堀越医師は、ご自分が記入する際に「人生の価値」とは何かを考え、その方向づけにあるものとしてV.E.フランクル(オーストリアの心理学者でアウシュビッツ生還者)の「死と愛」の中に掲げられている3つの価値を紹介して下さいました。一つは「創造価値」で、何かを行うこと、活動したり創造したりすること、自分の「仕事」を実現すること、二つ目は「体験価値」で、何かを体験すること、自然、芸術、人間を愛すること、三つ目は「態度価値」で、自分の可能性が制約されているということが、どうしようもない運命であり、避けられず逃れられない事実であっても、その事実に対してどんな態度をとるかという問いに対する答え。「態度価値」について堀越医師は、医療の現場の体験から見出された態度価値についてお話し下さいました。

「態度価値」について牧師の方からは、自分の可能性が制約されているというどうしようもない運命、逃れられない事実、それに対してどんな態度を取るかという問いの答えは、聖書が考える材料を提供してくれている、日曜日の礼拝も答えを見いだす一助になるはず、というコメントをいたしました。質疑応答では、いろいろ実際的な事柄に関する質問や、ご自身の体験を語って下さった方もおられ、1時間半の講演会はあっと言う間に終わった感じでした。(記録 吉村)

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