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ホトトギス
<28 また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。29 しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。 マタイ6:28・29>
路傍の花壇にホトトギスが咲いていました、ユリ科のこの花は殆どが日本固有種です。一見地味な花ですがよく見ると小紋交じりの味わいの深い色をしています。江戸時代の町民文化に粋と言う言葉があります、奢侈禁止令により着物に関して庶民が身につけられるものには、柄や色、生地まで細かく厳しい規制がされおり、生地素材は「麻」「綿」、色は「茶色」「鼠色」「藍色」のみと限定されていました。しかし、「他の人とは違うものを着たい」という欲求は今も昔も変わず、色の中に微妙な色調を生みだし楽しむ日本人ならではの美意識から「四十八茶百鼠」などの落ち着いた渋い色がたくさん生まれました。一見地味に見えながらもよく見るとおしゃれと言うのが江戸文化の粋でした、ホトトギスはそんな粋の感じがする花だと思います。
過日、元スオミ教会の教会員であった青木さんがバッハのロ短調ミサ曲のコンサートに行かれその感激をFBに投稿されていました。この曲はマタイ受難曲と並ぶバッハの傑作で私もよく聞いています。 手持ちのCDは山梨の家に置いてあるのでyoutubeでカールリヒターの盤で視聴しました。敬虔なルター派教徒のバッハがカトリックのミサを音楽で表現したロ短調ミサ曲は一部にプロテスタントの典礼も取り入れたためにカトリックの典礼でも使用できないものになってしまいました。しかし音楽としては大変素晴らしく聞くたびに感動を覚えます。曲の構成はキリエ・グローリア→クレド(ニケア信条)→サンクトゥス(ここにプロテスタントの典礼を用いた)→「オザンナ(聖なるかな)」「アニュス・デイ(神の小羊)」「ドナ・ノビス・パチェム(平安)」私たちの礼拝の流れとよく似ている事に気づき少し驚いています。2時間あまりの大曲ですが興味がおありでしたらどうぞ。カール・リヒター+ミュンヘンバッハ管弦楽団+ミュンヘンバッハ合唱団の組み合わせは最高ですね。wunderwar!
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懐かしい「週報」
本棚の隅に忘れていた本を見つけ開いてみたら古い週報が出て来ました。2007年4月6日の聖金曜日礼拝の週報でした。当時の週報はセイヤ先生がお一人で作っていらっしゃいました、慣れない日本語なのでのご苦労が偲ばれました。この夜の礼拝は牧師夫妻と和智(現在、井手さん)さん星野の4人だけでした,礼拝は何時ものスタイルではなく会衆席に円陣に座り祈りの一時を持ちました。終わりに覚えたてのフインランド語で「主の祈り」を唱えてヘイッキネンご夫妻から褒められました、和智さんがäの発音をきれいに発音していたのを今でも覚えています。
新聞のコラムにアランというフランスの哲学者(本名エミール=オーギュスト・シャルティエ)の次の一文が掲載され目を引きました(朝日10月24日「折々のことば」)。
「礼拝の規則は、さまざまな動きに規律を与えて、あらゆる情念、あらゆる情動を鎮めるものだ。」
私たちルター派教会の礼拝は、ご存じの通り定められた礼拝式文に従って執行されます。教派によっては、形式に取らわられずに自由な形で行っているところもあります。恐らく若者はそういうやり方がしっくり行くのかもしれません。それででしょうか、ルター派に限らず伝統的な教派は若者があまり集まらず高齢化が進んでいるように思われます。
不思議なことにフィンランドでは、もちろん国教会の普通の主日礼拝はどこも閑散としていて高齢者が目立ちますが、SLEYの礼拝は国教会の式文に従うにもかかわらず、またそのメッセージも国民の多数派から呆れかえられる位に保守的なのにどこも満員御礼で若者や子供連れの若い家族で一杯になります(コロナ禍の今は少ないですが)。どうしてでしょうか?
SNS旺盛時代の今、あらゆる情念やあらゆる情動が野放し大放出になっています。そうした中、心のさまざまな動きに規律を与える礼拝は魂を鎮めて安らぎと落ち着きを与える意味があると思います。
SLEYの礼拝に、「喜びのミサRiemumessu」という音楽をふんだんに使った聖餐式礼拝があります。奏楽はゴスペル・ロックバンド、司式の言葉は全てポップ調のメロディーで歌いますが、式の内容は罪の告白、赦し、聖書日課、説教、信仰告白、教会の祈り、奉献、聖餐式、祝福と伝統的な式文そのままです。SLEYの夏の全国大会の土曜日夕方の野外礼拝で7,000~8,000人位に聖餐を授ける礼拝の時にいつも用いられます。翌日日曜日の聖餐式礼拝は通常の形で行いますが人数は変わりません。
12月6日はフィンランドの独立記念日。毎年恒例の大使館でのレセプションは昨年はコロナ禍で中止になったが今年は開催された。 (3日金曜日にあり行ってきました。一足早くクリスマス料理を味わってきました。)
フィンランドの12月6日は独特な雰囲気のある日であったことをよく覚えている。冬の薄暗い日中、家ではパイヴィが子供たちとせっせとピパルカックを作り、晩になると大統領官邸でのレセプションのテレビ中継を見たものだ。その日のテレビ番組は第二次大戦の出来事を特集する番組が圧倒的に多く、フィンランド人はいかに独立したかよりも、いかに独立を守ったかの方に関心があるのかと思ったものだった。
それは理由のないことではない。1919年の独立当時のフィンランドは国内は分裂状態で、独立後も、左右イデオロギーの対立、都市部と農村部の対立、フィンランド語系とスウェーデン語系の対立が激しく、今風に言えば「分断国家」であった。それは徐々に解消に向かうが、それを一気に解消したのが第二次大戦での(当時の)ソ連との戦争であった。外的な脅威に対して国民が一致団結したのである。
戦時中の標語に、祖国(isänmaa)自由(vapaus)信仰(usko)の3つが守られるべきものとして唱えられた。「祖国」とは日本風に言えば「兎追いしかの山」であり、「自由」とは自由と民主主義の政治体制であり、「信仰」とはルター派教会である。フィンランド人は国家的困難によく耐え乗り越え、M.ヤコブソンが言ったように、第二次大戦に参戦した欧州の国で英国とフィンランドのみが占領を免れ戦前の国家体制を維持できた国だったのである。
「戦前の国家体制の維持」と聞くと、大方の日本人は顔をしかめるかもしれない。なぜなら、日本のそれはかつて丸谷才一が言ったように、お上に盾をついたと言いがかりをつけられないかビクビクしなければならない体制だったからだ。しかし、フィンランドは戦時中も国会は社会主義政党から保守党まで揃う議会制民主主義が機能していた国だったのだ。(そんな国がなぜ最後はナチス・ドイツ側に立って戦うことになってしまったかについては、国際政治史の専門家に聞いて下さい。私も少しは説明できます。)
フィンランドの例は、「国を守る」という時、 情緒面だけでなくvapausの重要性も示していると言える。なぜなら、それはこの国は守るに値する国だと理知的に確信できる根拠になるからだ。 それと、uskoがvapausと両立することも重要であることは言うまでもない。日本では愛国心を育む道徳教育が義務教育で必修になったが、準備段階でこのような視点で考えられただろうか?
さて、今のフィンランド人に守るべきものは何かと聞いて、上記の3つは果たして出てくるだろうか?思うに、「信仰」が危ういかもしれない。というのは、1990年代まで国民の90%以上がルター派国教会に属していたが、以後国民の教会離れが急速に進み出し、現在は70%を割ってしまっているからだ。戦時中は大統領から国民に至るまで上記の3つが守られるよう懸命に神に祈ったものだ。ソ連との交渉に臨む代表団がヘルシンキ中央駅を出発する時、見送りに来た群衆が一斉にルターの讃美歌「神はわがやぐら」を歌って送り出した気概はもうないのだろうか?(2020年12月6日初掲載)
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文・写真:パイヴィ・ポウッカ 翻訳:パイヴィ・ポウッカ & 杉本輝世
今年コロナ禍のために開催できなくて残念だったものは何?と聞かれたら、大抵の人は東京オリンピックと答えるのではないでしょうか? 実は今年はSLEY(フィンランド・ルーテル福音協会)が日本伝道を開始してから120年目の年でした。 5月後半の主日に午前中は自由参加の記念礼拝と祝会、午後は招待者を中心とする祝会を開催することを計画していました。計画を立て始めてまもない2月に断念を決めました。来年は開催できるでしょうか?
SLEYの最初の宣教師が日本の土を踏んだのは1900年のことでした。フィンランドが独立する17年前のことです。ヴェルロース牧師一家と17歳のクルヴィネン嬢の一行が長崎に上陸しました。
そこで伝道開始するも、牧師一家の末娘が病死してしまい失意の一家は帰国。一人取り残されたクルヴィネン嬢は米国の宣教団と行動を共にします。まもなくしてフィンランドから新たな宣教師の派遣があり、SLEYとしての伝道を再開。ところが日露戦争が始まり、当時フィンランドはロシア帝国の一部だったため敵国民扱いを受けてしまい、都市部での伝道はやめて長野県の飯田や諏訪の地域に移動。やがてそこで信徒が増え始めて教会が建てられます。日露戦後は再び東京で活動を開始、池袋や大岡山に教会が建てられます。その他に北海道の札幌にも建てられました。
第二次大戦中は8人の宣教師が帰国の機会を逸して日本に留まりました。フィンランドは日本にとって「敵の敵は味方」のような立場でしたが、天皇絶対主義の日本ではキリスト教はとても肩身の狭い思いをしました。戦争末期にはSLEY宣教師たちは軽井沢に強制疎開させられ、軟禁状態に置かれて孤立化と食糧難に苦しみました。
戦後すぐの1948年に伝道活動が再開されます。SLEYは当初、自分たちが設立した教会から成る独自のルター派教団を結成するつもりでした。ところが、新しく設立された「日本福音ルーテル教会」への対応をめぐり意見が真っ二つに分かれます。最終的にはこの日本のルター派教団に合流することが決められ、自分たちが設立した教会や付属幼稚園は全部、日本福音ルーテル教会に譲渡されて今日に至っています。今でこそ日本フィンランド間の交流は公的私的レベルにおいて広く深いものになりましたが、かつてフィンランドのルター派国教会の一ミッション団体が両国間交流の中心的存在であったことを今日誰が思い起こすでしょうか?
アドベントという「待降節」に入りました。アドベントはクリスマス 前の4週間を意味します。12月1日からは、このホームページで「エートゥ君、おじいさんとアドベントの天使たち」というクリスマスカレンダーを公開します。大人も子どももみんな、 カレンダーの物語を読みながらクリスマスを楽しんで迎えましょう。
文・写真:パイヴィ・ポウッカ
今日は、12月何日ですか?
12月1日(水)からは、このページに『私のクリスマスの旅』というクリスマスカレンダーを公開します。12月1日から毎日、日の数字をクリックすると「私のクリスマスの旅」の物語が続きます。ストーリーが終わったらクリスマス・イブです!大人も子どももみんな、 カレンダーの物語を読みながらクリスマスを楽しんで迎えましょう。
翻訳:パイヴィ・ポウッカ & 杉本輝世
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